ルーちゃん&ハーちゃんの米国世界征服日記☆

米国世界征服日記☆ エピローグ機\鑢鯀輊

統合体

「我がアメリカ連邦は本日を以って人類統合体への移行を宣言する!」

 1948年5月18日正午、統合体中央政府首都ワシントンにおいて人類の歴史は塗り替えられた。
かつての地球最大の国家モンゴル帝国を遥かに上回るほぼ単一からなる統一国家がこの日この時生まれたのだ。
統合体の前途を表すが如く晴れ渡る蒼穹に祝砲が打ち鳴らされ、その上でF-92スーパーセイバーのアクロバット飛行が華麗な舞を踊る。
そのさらに上方、静止軌道上ではつい先日フロリダのケープ・カナヴェラル空軍基地から
ヒューベリオンで投入された人類初の人工衛星エクスプローラー宜罎周回を行いつつその役目を果たしている。

 本来トルーマンはこの時期に連邦大統領―今となっては統合体大統領だが―の椅子には就いていない。
彼が大統領に就任するのは1948年である。
史実ではフランクリン・ルーズヴェルト大統領は特に異常も無く健康なまま1948年までの4期を勤め上げるのだ。
そしてその時人類統合体は存在しない。
代わりにアメリカ連邦とソヴィエト連邦の世界を二分する大国同士が睨み合い、互いを牽制する『冷戦』と呼ばれる状況が出現している。

 それでは駄目だ。

 実は1940年の突然の大統領交代劇、あれはトルーマンの発案である。
あの時彼は組織内での活動に限界を感じていた。
幾ら内部工作を行っても結局焼け石に水であり自分の思い通りには行かない。
どうしても大統領の椅子が必要だったのだ。

 幸いにして計画は成功し彼は晴れて正式に連邦のトップへ上り詰めた。
ルーズヴェルトに余程信任されて居たのだろうか。
「今でも期待を裏切ってはいないはずだ。私は確かに世界を手に入れたのだからな」

 そんな思考を巡らせている間にも式典は進んでゆく。
憲章の発布、続いて統合体国旗・国章の発表。
国章の意匠は黒地の八角形に五つ星と流星だ、この辺りにもトルーマンの思いは表れているのだろう。
更に各自治行政区のものが続く。

 この間ずっと国歌が奏でられている、
歌詞は歌われてはいないが要約すれば人類は永遠の繁栄を続け宇宙の隅々までをその手中に収めるだろうといった意味だ。
実に傲慢極まりないような詞ではあるが、同時に人類史上初の偉業を成し遂げたのだ。
この位は許されるだろう。

 さて、そろそろお気付きだろうが繰り返し現れているキーワードがある。
それこそが彼の夢の対象。

 一連の発表が全て終わり、式典を締めくくるべくトルーマンは再び壇上へ上がる。
そして統合体大統領として、また区切りとして自分に言い聞かせる意味で。
徐にスピーチを始めた。

「人類は今この時を以って新たな段階へと突入しました。
 我々は小さな惑星。いや、星系に留まっているべき存在ではありません。
 既にご存知かとは思いますが、つい先日我々はある快挙を成し遂げました。
 それは即ち人類最後の開拓地、宇宙への進出です。
 たかが人工衛星。
 惑星規模でみれば極々小さい塵のようなもの。
 しかし、しかしこの小さな一歩は人類にとって大きな一歩です!
 約束しましょう、中央政府は各区の生活レベルの大幅な上昇と平行して大規模な宇宙開発を行います。
 それによって5年以内に人類は天空に浮かぶ衛星たる月の地を踏むことでしょう」
 
「我々が当面目を向けるべきは身近な事、統合戦争によって破壊された生活の復興です。
 無論そちらにも手を抜くつもりはありません。引き続き全力を以って計画を進めることを保障します。
 故に私は全ての復興事業を終えた時に改めてこの言葉を述べましょう。
 『人類よ飛翔せよ、星辰の彼方へ!』と」
 

宇宙へ―西暦2028年―

 統合戦争終結後に人類統合体中央政府がまず行ったことは各自治行政区への大規模な復興支援だった。
1949年時点で地球上には多数の自治行政区と3の特別行政区が存在したが、各区間での格差はそれなりに大きなものだった。
それらが結果的に不満の種になる事だけは防がねばならない。

 そこで中央政府が取った対応は開発重点区を設け、
特に中東やアフリカ、南アメリカ、中央アジア等の開発を集中的に行うと言う至極一般的なものである。
世界が統一された事による最大のメリットの一つである工業力の集中管理はそこで如何無く発揮された。
驚くべき事に各地域のインフラは劇的に改善し、工業生産能力は4年間で戦争前の3倍にも達したのだ。

 また、各行政区間での自由貿易が推奨された事も相まって経済はより一層活性化の度を増して行った。

 なお、当初心配された内乱の類は殆ど発生しなかった。
アメリカ連邦は終始一貫して自由で民主的な国家であり、その姿勢は統合体となった以降も保持される事となる。
各地域を直接統治するのでは無く、軍事力の保有禁止を除けば後はほとんど自由が効く。
おまけに何かあれば中央政府が色々と支援してくれるとあれば悪評が立つ理由もそう多くは無かった。

 行政区独自の軍事力の保有禁止は特に旧植民地諸国に好意的に受け入れられた。
これで大国による侵略の脅威に怯えなくて済むのである、逆に感謝するものさえ存在する。
権限に関しても植民地時代に比べれば大幅に拡大されており、連邦=解放者の図式が成立しつつある地域も少なくない。

 逆に旧大国の一部は不満を鳴らす事もあったが叛乱を起こしたところで中央政府に瞬く間に鎮圧されるのは目に見えている。
更に現状は歴史的に見ても極めて安定しており、この状況下での行動は他の行政区から非難される可能性が高い。
戦争の消滅は大方の人間にとって好ましいことであるし他には特に反抗材料が無い。
等の理由から積極行動を起こそうとはしなかった。

 次に先述の特別行政区について話そう。
3つの特別行政区とは言わずもがなの旧アメリカ連邦本国と旧イタリア王国、そしてエルサレムの事である。
(本来ならばここにリベリアとフィリピンが入っている筈だったのだが、彼らは望んで付近の行政区に編入された)
旧連邦域はそのまま中央政府となっている。旧イタリアは芸術や文化面での先駆者として、
また統帥権は無いとは言え唯一軍事力を保有し国家としての体裁を整えている事からある程度の敬意を持って見られている。
実は統合戦争時に多数のエースパイロットを輩出したイタリア空軍の勇戦ぶりは結構知られた話だったりするのだが。

 ではエルサレムはなんなのか?
それは開かれた聖地としての意味であった。
彼の地は古来より紛争の地でありどこの所属としても不満が生じる。
何せただエルサレムと言っても様々な宗教の聖地が複雑に絡み合って存在しているのだ。
その中での唯一最高の解決策が『開かれたエルサレム』、
つまりどこの所属でもない共通管理地域として通行を完全に自由にする事だった。

 最後に統合戦争を最後まで支えた二人の未来と夢の行方を追ってみよう。

 世界の自動車王ことヘンリー・フォードは大量生産技術など20世紀の工業社会の基礎を築き上げている。
統合戦争後は1950年にフォード・モーター社とゼネラル・エレクトリック社の合併を敢行しゼネラルグループを創設。
同年グループ会長に就任し1956年にこの世を去るまでに精力的な活動を続けた。
ゼネラルはその後も人類統合体の中核企業であり続け、
人類社会に多大な貢献を行い『最も尊敬される企業』と称されている。

 史上最高の指導者ことハリー・S・トルーマンの最も大きな功績はやはり人類統合体の設立であろう。
しかし、同時に人類の宇宙開発を飛躍的に進めた立役者の一人としての一面も持っている。
彼はアメリカ連邦第33代大統領としての7年間と人類統合体初代大統領としての12年間の間に幾つもの計画を打ち出している。
代表的なものでは1947年の人工衛星打ち上げ、1952年の有人月面探査、1958年の軌道ステーション『ニューアース』建設等だ。
自身も大統領を退き欧州中央行政区出身のヴェルナー・フォン・ブラウン、
ウクライナ行政区出身のセルゲイ・コロリョフらと共に創設した統合体航空宇宙開発機構の長となった1964年に月面の地を踏んでいる。
『地球は青かった』と言う名言は誰しも一度聞いたことがあるだろう。

 彼の生涯をかけたプロジェクトである火星有人探査は、残念ながら成功を見ないまま1979年に没した。
だが、その遺志は受け継がれ1995年にディスカヴァリー垢ついに火星有人探査を成功させる。
没後16年をして彼の夢は叶ったのだ。

 2012年に竣工した星系内航行型第一世代航宙船の一番艦は彼に敬意を表して、
ハリー・S・トルーマンとされ2028年現在も地球軌道-月面第1宇宙基地間の定期航路に就航している。
再来年には初の木星軌道ステーションが完成の予定。
彼の宇宙にかける思いは今もなお我々人類と、統合体と共にある。

ルーちゃん&ハーちゃんの米国世界征服日記☆ 完

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Last-modified: 2008-02-12 (火) 00:00:00 (4143d)